企業人事に革命をもたらす「HR tech」に要注目!|コラム|HR tech

「HR tech」とは「Human Resource(HR)」と「technology」をかけ合わせた造語です。「人材」の採用や育成に始まり、評価や配置にいたるまでを、最先端の「IT技術」を用いて行うシステムは、まさに革新的だと言えます。では、「HR tech」が企業にとって、具体的にどのようなメリットをもたらすのか見ていきましょう。
求人・採用にかかるコストが大幅に削減
人口が緩やかな減少傾向にある日本において、優秀な人材をいかに素早く確保できるかが喫緊の課題です。
一方で、企業にとって効果的な人材獲得手法のひとつに「社員紹介制度」があります。これまでアナログ的な方法でしか行えなかった社員紹介に、ソーシャルメディアを活用すれば、その効率は飛躍的に上昇することでしょう。例えば、ソーシャルメディアのリンクアイコンを埋め込んだ社内メールを、人事部から各社員に送信するとします。すると、メールを受け取った社員はそのアイコンをクリックするだけで、個人のアカウントから簡単に「社員募集の告知」ができてしまうのです。これならば、社員にとっても気軽に紹介できますし、お金も時間もかかりません。
また、企業サイドにもメリットはあります。投稿を見て応募してきた人が、どの部署の誰からの紹介なのかを正確に把握することができるからです。ここで社員紹介への報酬を公平公正に行えば、紹介した社員は、その後も社員紹介に協力してくれやすくなります。こうして、応募者が多数集まれば、次は採用候補者の絞り込み・順位付けが必要です。
限られた時間と予算の中、ここでも「HR tech」の活躍が期待できます。これまでは、採用企業を実際に訪問した上で面接を行う必要がありましたが、今後はモバイル端末のカメラを利用した「遠隔面接」が一般的になるでしょう。これにより、中小企業でも日本全国から幅広く人材を求めることが可能になると言えます。
人材の育成や配置、離職対策も効果的に
めまぐるしく変化していく事業環境の中、求められる人材や組織づくりも、そのスピードに対応して行う必要があります。これまで、新規採用した人材の適正を見極め、育成していく作業は時間と経験が求められるのが通例でした。
しかし、これらも「HR tech」を用いることで大幅な効率化を期待することができます。なぜならば、クラウドに蓄積されたビッグデータを基に、人工知能が新入社員一人ひとりの能力を評価し、最適な研修メニューの提案を行えるようになるからです。
また、「HR tech」はより良い組織づくりにも一役買います。例えば、あるポストにある人が、退職または異動になったとしましょう。すると、その後任人事として誰が適切なのかを選定する必要が生じます。同じ部署の部下がいいのか、それとも他部署や社外から採用するべきなのかを、これまでは人事部のスタッフが分析・判断をしてきました。これらの作業も、今後は「HR tech」にあらゆる人事データを蓄積・分析し、学習させることで後継者の提案をしてもらうことが可能になります。
さらに、今後このシステムが一般化されると、離職する可能性の高いスタッフや離職の理由が分かるようになると言われています。せっかく確保した優秀な人材も、辞められてしまっては元も子もありません。給与や部門などの勤務条件を変えることにより、どれくらい離職可能性が改善されるのかが事前に分かれば、適切な対応もしやすくなるというものです。
スタッフの健康までも一元管理で
「HR tech」の導入により、スマートウォッチ等のウェアラブル端末やスマートフォンを活用して、社員の健康状態までも一元で管理できる時代が訪れようとしています。体温や心拍数、血圧の変化はもとより、体脂肪率や骨密度にいたるまでをシステムが管理することで、貴重な人材が病気で長期離脱する事態を未然に防ぐことが可能です。
また、病気の既往歴や服用している薬のデータなどから、人工知能が健康の増進に必要なアドバイスを社員に与えることも期待できます。ウォーキングやジョギングなど、社員個人が自発的に行っている運動のデータを公開してもらうことで、部署間で競い合う仕組みを構築することも一つの案でしょう。
福利厚生施設の利用実績、勤務時間や休暇取得率といったデータを分析すれば、健康上深刻的な状況に置かれる前に、企業として有効な手立てができるようにもなります。もちろん、社員個人の健康に関するデータは、その取扱いに対して細心の注意が払われるべきです。企業が健全に運営されていくためには、社員個人が心身ともに健康であることが求められます。
この分野でも、「HR tech」は、その活躍が期待を集めつつあるのです。
まとめ:「HR tech」がもたらす新しい人事手法に乗り遅れるな
今後は「HR tech」を用いた革新的な人事手法が主流になると予想されます。また、今後は2000年以降に生まれた世代が、応募者の大半を占めるようになる時代です。この世代の若者は、慣れ親しんだモバイル端末を駆使して、効率的に数多くの面接をこなしたいと考えることでしょう。この新しい手法に乗り遅れることなく、企業に必要な人材を確保したいものです。
2018.9.14